Google・Meta・TikTokの広告は、2026年の夏から秋にかけて「AIに任せる」ことが前提の設計へさらに進みました。Googleでは一部の検索キャンペーンがAI機能へ自動で切り替わり始め、Metaは自社開発の画像生成AIを広告作成機能に組み込むと発表し、TikTokは自動と手動の作成画面を1つにまとめています。
先に結論をお伝えします。3社とも「AIを使うか、使わないか」の二択ではなく、項目ごとにどこまでAIに任せるかを選ぶ形になっています。少人数で広告を運用する中小企業は、「誰に届けないか」「何を言ってはいけないか」「どのページに案内するか」「いくらまで使うか」の4つを人が決め、組み合わせや配分はAIに任せるのが現実的です。
本記事では、各社の公式発表とヘルプ(2026年10月1日時点で確認)をもとに、3社の変更点と、AIに任せる範囲を決めるための確認ポイントを整理します。
2026年夏〜秋、3社の広告で何が変わったか
3社の主な変更は次のとおりです。日本での提供時期が公式に明記されていないものは「未確認」としています。
| 媒体 | 主な変更 | 時期 | 日本での提供 |
|---|---|---|---|
| Google広告 | 自動作成アセットとキャンペーン単位の部分一致設定を使う検索キャンペーンが「AI Max(AI 最大化設定)」へ自動で切り替わる。動的検索広告(DSA)は新規作成ができなくなった | 2026年9月〜。既存のDSAは2027年2月に自動切り替え | 日本語ヘルプあり。日本の切り替え時期は公式に明記なし |
| Google広告 | 新しい利用規約で、自動生成されたキャンペーンやアセットを確認・承認・削除する責任が広告主にあると明記 | 2026年7月1日施行 | 全体に適用 |
| Meta広告 | Meta自社開発の画像生成AI「Muse Image」を、Advantage+ クリエイティブで使えるようにすると発表 | 2026年7月7日発表 | 未確認 |
| Meta広告 | 広告セット内の画像・動画がどれだけ似ているかを「高・中・低」で示す「クリエイティブの多様化」指標がヘルプに掲載 | ヘルプに日付の記載なし | 日本語ヘルプあり(推定値・開発中) |
| TikTok広告 | Smart+(自動化キャンペーン)と手動キャンペーンの作成画面が1つになり、項目ごとに「完全自動・部分自動・完全手動」を選べるようになった | ヘルプ最終更新 2026年9月 | 日本語ヘルプあり。ただし全ユーザーが使えるわけではない |
| TikTok広告 | AIクリエイティブ「Symphony」で生成できる動画の長さが15秒から30秒へ延長 | 2026年8月3日発表 | 未確認(一部市場の一部広告主から順次) |
3社に共通する流れ:「AIのオン・オフ」から「項目ごとの任せ方」へ
3社の変更に共通するのは、AIが標準になる一方で、止める・制限する手段も項目ごとに用意されている点です。
- Google:AI Max の「テキストのカスタマイズ」と「最終ページURLの拡張」は、キャンペーン設定でそれぞれオフにできます。検索語句のマッチング拡張は広告グループ単位でオフにできます。
- Meta:Advantage+ クリエイティブの補正機能(エンハンス)は、一部が初期状態でオンになることがありますが、いつでもオフにできるとヘルプに書かれています。
- TikTok:予算・ターゲティング・配置・クリエイティブを、項目ごとに自動か手動か選べます。
つまり、何もしなければAIに任せる範囲が広がり、意図して設定すれば人が決めた枠の中でAIを動かせます。担当者が少ない会社ほど初期設定のまま使いがちなので、「自分のアカウントでは何がオンになっているか」を把握することが最初の一歩になります。
AIに任せていい領域と、人が決めるべき領域
私たちが中小企業の広告運用を支援する中での考え方を、媒体をまたいで整理すると次のようになります。AIは「たくさんの組み合わせを試し、成果の出る配分を探す」ことが得意です。一方で、事業のルールや法律に関わる判断は、管理画面の初期設定では守られません。
| 項目 | AIに任せやすいこと | 人が決めること |
|---|---|---|
| 入札・予算配分 | キャンペーン内・広告セット間の配分、入札単価の調整 | 月の上限予算、目標とするCPA・ROAS |
| 配信先(検索語句・オーディエンス) | 反応しそうな人や検索語句への拡張 | 出してはいけない地域・年齢・既存顧客などの除外、競合ブランド名の扱い |
| 広告文・画像・動画 | 素材の組み合わせ、サイズ調整、言い回しの案出し | 使ってはいけない表現(誇大表現、薬機法・景品表示法に触れる文言)、ブランドのトーン |
| 遷移先ページ | 指定した範囲の中からのページ選択 | 案内してはいけないページ(採用・ブログ・在庫切れ商品など) |
| 計測 | 集まったデータを使った最適化 | 何を成果(コンバージョン)とするか、正しく計測できているかの確認 |
とくに注意したいのは広告文と画像です。Googleの新しい利用規約では、自動生成されたアセットを確認・承認・削除する責任は広告主にあるとされています。AIが作った文言でも、表示の責任を負うのは広告主です。
Google広告:AI Max への自動切り替えで確認すること
AI Max は、検索語句のマッチング拡張、テキストのカスタマイズ、最終ページURLの拡張の3つの機能に、ブランド・地域・URLの制御をまとめた検索キャンペーン向けの設定です。Googleは2026年9月から、自動作成アセットやキャンペーン単位の部分一致設定を使うキャンペーンを AI Max へ自動で切り替え始めました。既存の動的検索広告(DSA)は、当初の予定から延期され、2027年2月に切り替わります。
Googleは、AI Max の機能をすべて使った検索キャンペーンでは、CPA・ROASを同程度に保ったままコンバージョン数(またはコンバージョン値)が平均7%増えたとしています(小売以外の広告主、Googleの2026年の社内データ)。ただしこれは平均値で、すべてのアカウントで同じ結果になるとは限りません。
参考記事 Google Ads & Commerce Blog(DSA等の AI Max へのアップグレード)/Google 広告ヘルプ(AI 最大化設定)
中小企業のアカウントでは、次の順番で確認するのがおすすめです。
- 対象のキャンペーンがあるか:自動作成アセット(テキストのカスタマイズ)やキャンペーン単位の部分一致を使っている検索キャンペーン、動的検索広告を洗い出します。
- 検索語句レポートを見る:マッチタイプに「AI 最大化設定」が表示されます。「ソース」列で、どの仕組みで拡張された語句かを区別できます。事業と関係のない語句があれば除外キーワードに入れます。
- 遷移先を制限する:最終ページURLの拡張を使う場合は、採用ページやブログ、終了したキャンペーンページなど、広告から案内したくないURLをキャンペーン単位で除外します。不要ならキャンペーン設定でオフにできます。
- 広告文を確認する:テキストのカスタマイズで作られた広告文は、アセットレポートで確認できます。表現の制約が厳しい業種(健康・美容・金融など)は、オフにする、またはテキストのガイドラインで使ってほしくない表現を指定することを検討します。
- ブランドの設定:自社名だけで出したい、競合の社名の横には出したくない、といった場合はブランドの登録・除外を使います。
- DSAは期限前に自分で移行を試す:2027年2月の自動切り替えを待たずに、小さなキャンペーンで AI Max を試し、成果と検索語句を比較しておくと安心です。
AI Max の小売向け機能については、以前の記事「2026年5月 Google広告のAI活用がさらに進化。AI Max for Shopping・旅行向け検索キャンペーン・YouTubeクリエイター活用の最新動向」で紹介しています。
Meta広告:Advantage+ で確認すること
Meta広告では、ターゲティング(Advantage+ オーディエンス)とクリエイティブ(Advantage+ クリエイティブ)の両方でAIが使われています。2026年7月には、Meta自社開発の画像生成AI「Muse Image」を Advantage+ クリエイティブで使えるようにすると発表されました(日本での提供状況は未確認)。
クリエイティブ:どの補正がオンになっているかを見る
Advantage+ クリエイティブには、明るさとコントラストの調整のような簡単な補正から、テキスト生成、背景生成、画像生成、翻訳のような生成AIを使う機能まで、30を超える補正があります。ヘルプでは、一部の補正は初期状態でオンになることがあるが、いつでもオフにできると説明されています。また、Metaの生成AI機能で作成・大幅に編集された広告画像には「AI情報」のラベルが表示される場合があります。
文言や画像の表現に制約がある業種では、テキスト生成・テキストの改善など「文言を変える」補正がオンになっていないかを広告ごとに確認し、必要に応じて一括編集でオフにします。
参考記事 Advantage+ クリエイティブについて|Metaビジネスヘルプセンター/Introducing Muse Image(Meta Newsroom)
オーディエンス:「制御」と「提案」の違いを押さえる
Advantage+ オーディエンスでは、条件の指定に「オーディエンス制御」と「オーディエンスの提案」の2種類があります。
- オーディエンス制御(地域、最低年齢、除外するカスタムオーディエンス、言語):この範囲の外には配信されません。
- オーディエンスの提案(年齢、性別、詳細ターゲット設定など):AIが成果が上がると判断すれば、提案の外にも配信されます。たとえば性別で「女性」を提案しても、男性に配信されることがあります。
「商圏外には絶対に出したくない」「既存の会員には出したくない」といった条件は、提案ではなく制御(または広告アカウントの設定)に入れておく必要があります。
参考記事 Advantage+ オーディエンスでのオーディエンス管理とオーディエンスの提案について|Metaビジネスヘルプセンター
素材の数:「クリエイティブの多様化」を目安にする
AIに配信を任せるほど、AIが選べる素材の幅が成果を左右します。Metaの「クリエイティブの多様化」は、広告セット内の画像・動画のサムネイルがどれだけ似ているかを比べ、「高・中・低」で示す指標です。広告疲れを防ぐために、素材を追加すべきかを判断する目安として使えます。ただしヘルプでは推定値で開発中とされているため、ひとつの参考として扱ってください。
参考記事 クリエイティブの多様化|Metaビジネスヘルプセンター
Meta広告をAIエージェントから操作する動きについては、「Meta Ads CLIとは?Meta広告運用が「AIエージェント時代」に入ったことを示す新ツール」で解説しています。
TikTok広告:Smart+ は「完全自動・部分自動・完全手動」から選ぶ
TikTokでは、Smart+ のアップグレード版で、手動キャンペーンとSmart+ の作成画面が1つにまとまりました。キャンペーンを完全自動・部分自動・完全手動のどれでも組めます。対象の目的は、トラフィック、セールス、リード獲得、アプリの宣伝です。
| 項目 | 自動にした場合 | 手動にした場合 |
|---|---|---|
| 予算 | キャンペーン全体の予算を自動で配分 | 広告グループごとに予算を設定 |
| ターゲティング | オーディエンスコントロールの範囲でAIが配信先を探す | 手動でターゲティングを指定 |
| 配置 | 自動プレースメント(初期設定) | 配置を手動で管理 |
| クリエイティブ | 最大50のアセットグループを組み合わせて配信 | 広告ごとに素材を指定 |
ヘルプには、まだ全ユーザーが使えるわけではなく、使えない場合はアカウントマネージャーかカスタマーサポートに問い合わせるよう書かれています。
少額から始める場合は、いきなり完全自動にせず、予算と配信地域は手動で押さえ、クリエイティブの組み合わせから自動に任せるといった部分自動から始めると、何が成果に効いたかを追いやすくなります(これは私たちの運用上の考え方で、TikTokの公式な推奨ではありません)。
なお、AIで動画を作る「Symphony」は、2026年8月に生成できる動画の長さが最大30秒に延び、AIで作った動画にはAIラベルが付くと発表されています。ただし提供は一部市場から順次で、日本での提供状況は確認できていません。
参考記事 Smart+のアップグレード版エクスペリエンス|TikTok広告ヘルプ/TikTok for Business Blog(Symphony)
中小企業向け:月1回の「AI設定点検」チェックリスト
AIに任せる範囲は、一度決めたら終わりではありません。媒体側の自動切り替えや新機能で、気づかないうちに変わることがあります。月に1回、次の項目を確認しておくと安心です。
| 確認項目 | Meta | TikTok | |
|---|---|---|---|
| 新しくオンになったAI機能はないか | AI Max への自動切り替えの有無 | Advantage+ クリエイティブの補正 | Smart+ の各項目の自動・手動 |
| 想定外の相手に配信されていないか | 検索語句レポート(AI 最大化設定) | 年齢・地域別の内訳 | オーディエンスの内訳 |
| 想定外の文言・画像が出ていないか | アセットレポート | 広告プレビュー(補正後の表示) | 広告プレビュー |
| 想定外のページに案内していないか | ランディングページレポート(選択方法の列) | リンク先URL | リンク先URL |
| 素材は足りているか | アセットの数と評価 | クリエイティブの多様化 | アセットグループの数 |
| 成果の計測は正しいか | コンバージョンの数が実際の申込・購入数と大きくずれていないか | ||
最後の計測の確認は、3社すべてで最も重要です。AIは計測されたコンバージョンを手がかりに学習するため、計測がずれているとAIはずれた方向に最適化を進めてしまいます。
よくある質問
Q. 予算が少なくてもAIに任せたほうがいいですか?
AIは学習に一定量のデータを使うため、予算やコンバージョン数が少ないと判断が安定しにくくなります。少額の場合は、配信先や予算の枠を人が絞ったうえで、組み合わせの最適化からAIに任せる進め方が無難です。
Q. AIが作った広告には「AIで作成」と表示されますか?
Googleは2026年7月、検索・YouTube・Discoverの広告で、Googleの生成AIツールで作った広告に自動で開示を付けると発表しました。開示は「マイ アド センター」の広告の作成方法の欄に表示され、地域によっては広告にラベルが付きます。他社のAIツールで作った広告は、広告主が申告する設定が用意されます。Metaも、生成AI機能で作成・大幅に編集した広告画像に「AI情報」ラベルが表示される場合があるとしています。
参考記事 Google Ads & Commerce Blog(AI 透明性ラベル)
Q. AIに任せれば、運用の担当者はいらなくなりますか?
入札や配分の細かな調整にかかる手間は減ります。一方で、本記事で挙げた「誰に届けないか」「何を言ってはいけないか」「どのページに案内するか」「いくらまで使うか」、そして計測の確認は、事業を知っている人にしか決められません。AIに任せるほど、人の仕事は「操作」から「方針を決めて点検する」ことへ移っていきます。
まとめ
- Google・Meta・TikTokとも、AIに任せることが前提の設計に進んでいる。ただし、止める・制限する設定も項目ごとに用意されている
- Googleは2026年9月から一部の検索キャンペーンが AI Max へ自動で切り替わり始め、既存の動的検索広告も2027年2月に切り替わる
- Metaは Advantage+ クリエイティブの補正が初期状態でオンになることがあり、オーディエンスの「提案」は指定の外にも配信される
- TikTokは Smart+ で、予算・ターゲティング・配置・クリエイティブを項目ごとに自動か手動か選べる
- 中小企業は「除外」「表現」「遷移先」「予算」の4つと計測を人が決め、月1回の点検でAIの設定を見直す
ISSUNでは、Google・Meta・TikTokの広告運用と、計測の整備を支援しています。「自社のアカウントで何がAI任せになっているか分からない」「AI Max への切り替えの影響を確認したい」といったご相談は、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
参考にした公式情報(2026年10月1日確認)
- Google Ads & Commerce Blog:DSA・自動作成アセット・部分一致設定の AI Max へのアップグレード(2026年4月15日公開、6月11日更新)
- Google 広告ヘルプ:AI 最大化設定について
- Google 広告ヘルプ:Google 広告 利用規約の更新(2026年7月1日施行)
- Google Ads & Commerce Blog:AI 透明性ラベル(2026年7月9日)
- Meta Newsroom:Introducing Muse Image(2026年7月7日)
- Metaビジネスヘルプセンター:Advantage+ クリエイティブについて
- Metaビジネスヘルプセンター:Advantage+ オーディエンスでのオーディエンス管理とオーディエンスの提案について
- Metaビジネスヘルプセンター:クリエイティブの多様化
- TikTok広告ヘルプ:Smart+のアップグレード版エクスペリエンス(2026年9月更新)
- TikTok for Business Blog:Symphony × Dreamina Seedance 2.5(2026年8月3日)







