オレハックさんの「ロコンドが死に、ザッポスが生き残った理由」で気づいたこと。 | 株式会社ISSUN(イッスン)

オレハックさんの「ロコンドが死に、ザッポスが生き残った理由」で気づいたこと。

目次

オレハックさんの、「ロコンドが死に、ザッポスが生き残った理由」という記事がバズっていたので読んでみたら、ロコンドさんだけでなく、ザッポスもちょっと可哀想な表現をされていたので、記事を書いてみました。

氏の記事自体は、大変素晴らしい考察だな、とおもいました。ネット上に公開されている外部から得られる情報で、ここまで内部事情を推測されている点は秀逸だと思います。また、eコマース事業者なら、参考になる点も多くあると思います。

ただ、個人的には、会社として2度ほどザッポス本社にお伺いし、毎回パーティやお食事をご一緒させていただきながら、現場の方々からもその運営の実状を聞かせて頂いた身としては、少し誤解があるな、とも感じた点もありましたので、自分なりに気づいた点を書いておきます。

Satomizappos

2010/10 zapposエントランスにて。

■ザッポスとロコンドでは、販促費のかけ方とめざす方向が異るのでは。

氏の記事で、一番、的を付いているな、と感じるとともに、誤解を生んでいた点は

> 顧客対応、発送作業などの作業が通常のインターネット通販の数倍必要になってくるからだ。

の一行に集約されていると思います。

元々、ネット黎明期の頃、早々に「リンクエクスチェンジ」という「バナー広告配信システム」を供給する会社をたちあげて、最後はマイクロソフト社にそのしくみを売って大儲けしたザッポスのCEO、トニー・シェイは、いわばネット広告を熟知している経営者です。一方では、リンクエクスチェンジを立ち上げた当初、あんなに楽しかった会社が、規模が大きくなってゆくに連れ、「自分の会社なのに、つまらない。」と組織のあり方には疑問に思っていたようです。その反省が「ザッポス」であり、あれだけ精通していたネット広告に依存しないかわりに、リピータと紹介でほとんどの売上を上げ、米国のオンラインの靴のシェアを30%占めている点は特徴です。

30

その収益構造を達成するために彼らが取り組んでいるのが、顧客と社員と経営層がハッピーになれるような会社づくりです。

徹底した顧客サービスと、それを天職と思えるようなスタッフ育成に取り組みながら、「顧客に喜んでもらえるなら、顧客対応も返品送料も、すべてがマーケティングコスト。」と割り切っています。実際に2010年に初めてザッポスに訪問したときも、「顧客サービスや社内教育、職場環境にかけるコストが最も利益を圧迫している。でもそれが私たちのめざしているスタイルなんです。」というお話でした。

■無人化・数値化・効率化の向こう側。

こうしたザッポスの取り組みは、いわば、

・無人化

・数値化

・効率化

といった、アマゾンをはじめとする、多くのeコマースがめざすしくみとは、まったく逆の発想でもあり挑戦なのではないでしょうか。

少なくとも、10年以上、右肩上がりの成長を続けてこられたのも、そうした信念と計画があり、つまらなくなって手放してしまった(とはいえ、成功して大金を手に入れることができましたが)以前の会社と、ザッポスを同じストーリーにしたくなかった、というところが、トニー・シェイの経営者としての成功要因のひとつではないでしょうか。

Zappos2

(c) issun資料 2010

■赤字経営がまったくダメなワケでも無い。

ただ、ロコンドさんもまだ第2期ということで、赤字経営とは言え、ぎりぎり「創業時期、新規事業」の赤字です。2期連続の赤字だとすると、その額面からも悩ましいところですが、当初の事業計画で5年以内に黒字化が見込める可能性があるなら、条件だけで言えば、まだ融資も受けられる余地はまったく0ではない成長段階の時期といえるのではないでしょうか。つまり、決算書からは、販管費の15億円が目立ってしまいますが、それがあらかじめ「織り込み済み」なら大きな問題では無いと思います。(とはいえ、すこし現実的ではないですが・・・)

通販会社、特に化粧品通販や健康食品通販などでは、リピータ獲得のためなら、CPAは5万円以上でもかまわない、という会社さんは多いでしょう。ロコンドさんも、これがもし「想定の範囲内」の計画的な赤字であれば問題はないと思います。ただし、額面が額面だけに、よほどのバックアップが必要でしょうし、投資家の方々にとってもガマンのしどころなのか、悩みどころだとおもいます。でも、売上げ不振などによる「想定外の赤字」なら、他の方も指摘されているとおり、窮地に追い込まれているか、マーケティング手法を見直して行くべきだとおもいます。

つまり「集まるx売れるx継続する」という、基本的な売れる構造ができていれば、もし、それが一時的な赤字なら最後は成功するモデルケースはある、と言うことです。

弊社代表が提唱した「旧:売れるネットショップ」の構造

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■広告に頼らない収益モデルとは。


だ、黒字化・赤字化は別として、実際のマーケティングの現場的に考えると、やはりマス広告に頼らず、徐々に集客コストを抑えてゆくモデルに移行しつつあるように感じます。また、その潮流はすぐそこまで来ているのが現状ではないでしょうか。今からその新しいモデルを体得しておかなければ、昔のように「よし!明日から一気に広告で集客しよう!」というわけにはいかなくなってきているところが、ロコンドさんの大きな誤算だったのかもしれません。

しかし、広告無しで、一日に最大14億円売り上げるザッポスの在庫管理のしくみは、素晴らしいですね。アウトレット部門も活用されていて、在庫で大変なオンライン事業者さんには参考になるショップであることには変わりはないと思います。

2012/06/21 19:00追記「アウトレットの話はどこにいったぁ!」
ザッポスには返品商品を安くで販売するアウトレットサイト
http://www.6pm.com/ との連結でのお金の動きも大切だ!と

代表から指摘を受けましたので、とりあえず追記します。

株式会社ISSUN スタッフ

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この記事を書いた人
株式会社ISSUN(イッスン) 代表取締役 宮松利博
株式会社ISSUN(イッスン) 代表取締役 宮松利博
RIZAPグループ社創業時の商品開発とマーケティングを手がけ3年で年商20億円に成長、上場と同時に保有株を売却し、Webコンサルティング株式会社ISSUNを設立。日本イーコマース学会を立ち上げ、産官学連携にも取り組む。 【Facebook】【Instagram】【YouTube】【twitter】
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